最近は木の支持体を制作するのに苦労していました。
写真の用に、支持体の裏側に90°の溝を削って箱状に組み立てます。
なんでこんな面倒なことをするかといいますと、木目が繋がった状態にしたかったからです。
別々のパーツに切ってから組み合わせればそれほど難しくないのですが、
作品のコンセプトとしては、繋がっていたほうがいいので、何回も失敗しながら試行錯誤をしていました。
木はパイン集成材と桐の2種類を制作しました。
部分的に切断面の線が見えますが、自分の中で許容範囲ぐらいには出来ました。
加工技術が必要になるので、自然と大工仕事が身につきます。
パイン集成材の支持体
桐の支持体
私の作品の場合、支持体の質感をそのまま見せるので(厳密には透明な下地を塗りますが)「支持体作り=画面の下地作り」となります。
美術品に限らず、建築や工業製品などでも素地をそのまま見せることは技術的に難しいです。
塗装するなどの後々の修正が出来ないので、取り扱いに注意をして加工をする必要があります。
とても面倒ですが、その方法でしか表現出来ない物質的な美しさがそこにはあります。
布地を張る前にアイロンを掛けてシワを伸ばす
下地を塗ったあと布地が伸びている状態
木枠に布を張る支持体の場合も、私は絵画用ではない布地がそのまま見える状態で描きます。
その布に透明な下地を塗るときの問題として、物凄く収縮します。
最後の写真の支持体にマスキンテープが貼ってありますが、布がたわんでいることが分かると思います。
このような状況になるので、本制作用の木枠より一回り大きい仮木枠を制作して、そこに布を貼って透明な下地を塗ります。
乾燥後、布がたわんだ場合は布をしっかり張り直すことを繰り返します。
その後、本制作用の木枠に布を張りますが、後々布地が伸びることも多いので、木枠の大きさの微調整用の楔を打つことができる木枠を使用したり、自分で加工をしています。
このような作業は人に任せられれば任せたいと思うところがあります。
しかし、その反面、支持体を自分で制作することで、物質としての絵画を尊重した上で、空間性を描くアプローチする今の表現と密接な関わりがあるとも実感しています。